2021-12-20  尚子のクリーニング店―羽毛のゴミの謎―

某日,市内某クリーニング店に冬物の上着を持っていきました。

工藤静香「恋一夜」

店の自動ドアが開いて最初に気づいたのは,工藤静香の曲(恋一夜)が流れていたこと。

「いらっしゃいませ」と出迎えてくれたのは,50代の従業員。仮に名前を尚子としておきましょう。

私は店のカウンターに洗濯物を置いたところ,尚子は渡された洗濯物を調べ始めました。

私はその間,店内を眺めていました。店の床には無造作にCDラジカセが置かれていました。ラジカセの内部では,コンパクト・ディスクが激しく回転しており天井からの照明を反射して,キラキラとした光を放っていました。

私は,なぜか「今日はなんだか本格的だな」と思いました。

工藤静香の歌声も相まってか,凛とした空気が張り詰めているように思えたのです。

<画像の説明>尚子が愛用していたCDラジカセと似たような製品。市内ヨドバシカメラで撮影。

ダウンジャケットではなかった

尚子は,「防水加工はどうされますか」と聞いてきました。

(余談だが,昨年もこの店を利用したことがある。今回とは別のダウンジャケットの洗濯をお願いした。そのときの受付は,尚子ではない。)

私は,「あれ,以前こちらでダウンジャケットを洗ってもらったときは,防水加工されていましたよ。別料金になったんですか」と尋ねました。

尚子の目線が急に鋭くなったかと思いきや,「お客さん,これはダウンジャケットじゃありませんよ」と静かに呟きました。

突然,タイマン勝負が始まったのです(ふめい)。

私は「それじゃ何なんですか」と尋ねました。

尚子は,「ただの化繊(化学繊維)のジャンパーですね」と答えました。

私は「そうだったんですね」としか言いようがありませんでした。

尚子から指摘されて始めて気付きました。私が一冬,ダウンジャケットだと思って着ていた上着は,ダウンジャケットではなかったのです。

羽毛のゴミの謎

お恥ずかしながら,私の服に対する関心はこの程度。駅前の高架下の店で,安売りされていた上着を適当に買って着ていただけだったのです。

しかし,ダウンジャケットと比べてクリーニング代が割安だったので,これからは化繊のジャンパーを積極的に買おうと思いました。価格帯が極端に離れていなければ,肝心の防寒着としての機能は変わらないと感じました。

不思議なのが,たまにジャンパーに羽毛のゴミが付いていたのですよ。ダウンジャケットって,必ず羽毛が飛び出るでしょう。羽毛のゴミを度々,見掛けていたものだから,私はこの上着がダウンジャケットだと信じてやまなかったのです。

あれは某ジムのロッカーを利用したときに,ほかの人の上着から「もらい毛」したものだったのかもしれません。

トシちゃんがお出迎え

約1週間後,洗濯物を受け取りに再びクリーニング店を訪ねました。今回も受付には,尚子が座っていました。店内では,田原俊彦のずいぶんとチャラチャラとした曲(曲名不明)が流れていました。

私,てっきり尚子は硬派なんだと思っていましたが,どうやらそれは違ったようです。