1999-05-02  みんなの不自由

大型連休も中盤に差し掛かり,街角は親子連れで賑わっております。ぼくの連休の過ごし方をお話しますと,どういうわけかゼミ室のコンピュータの設定作業に追われております。ここのシステムがとにかく問題だらけなのよね。まるで開発環境になっていないんだから。「もしかして今までWebブラウザしか使ってなかったんじゃない?」と疑いたくなるほどです。(実際そうなんでしょうけど。)

閑話休題。

午後8時頃,1階の自動販売機へコーヒを買いに行ったら,某専攻のI藤くん(伏字になってない気が…)とばったり会ってしまいました。なんでもI藤くんは最近彼女に振られたとかでとっても落ち込んでいるのです。ぼくはI藤くんをゼミ室に引きずり込んで,事の真相を聞き出すことにしました。

(以下はI藤くんと私とのお話。)

あなたは本当にアナタですか?

I藤くん 「彼女とはPメールで知り合ったんだ。」

私 「PメールってPHSのやつ?ずいぶんハイカラな遊びしてるのね。」

I藤くん 「それでさ,実際逢ってみたんだけど,ぜんぜん印象が違うんだよね。メールだといろいろ話してくれるのに,(実際逢ってみると)なんか違うの。目の前にいるこの人と,メールのやり取りしていた人とは(同一人物であることは紛れもない事実なのだが結果的には)別人なのかなって。」

私 「なんだかありがちな話ね。ユミだったら実世界と仮想現実の世界って,はっきり分けているわよ。だから(パソ通入れたらネット歴9年だけど)今まで当り障りがあったことなんて一度もないわ。」

女の子にモテないのは見た目がぱっとしないから?

I藤くん 「ぼくってモテそうに見えないのかな。」

私 「はっきり言うけど,ぜんぜんイケてないわよ。でもね見た目がぱっとしないのは,仕方のないことなんじゃなーい?」

I藤くん 「やっぱり着る物に気を使ったりしないとだめなのかな。」

私 「それは無理でしょう。ワタシらの業界で専門誌(他,諸々の機材)に投資するのを止めたら,それって自殺するようなものよ。お金の使い道に優先順位を付ければ,服なんてものは最下位でしょうね。」

I藤くん 「そうだよね。」

――「そうだよね。」で終わっちゃうと,なんだか悔しいから続けるわよ。――

私 「それにね,ファッション雑誌の記事に「カッコイイ男になる」という特集はあっても,「知的な男になる」なんていうのは見たことがないでしょう。どうしてか分かるかしら?」

I藤くん 「どうして?」

私 「そんなの簡単。難しいことを記事にしても売れないからよ。あの手の雑誌って,その辺の地べたに座っているようなブサイクなガキでも分かるように,かつ実践できるように作られているのよ。結局ね,(髪型が良い例だけど)見た目を細工するのって,その効果ってものがだれにでも分かり易いものなの。私たちが目指していることって,それとは違うのよね。」

――I藤くんは,性格は悪くないし磨けばそれなりに光る子だと思うから,いずれは幸せになれると思います。保証はできませんけど。――

他の人と話合わないんだけど,どうしたらいいんでしょう。

I藤くん 「この前高校のクラス会があったんだけど,なんか気まずかった。「今何やってるの?」って訊かれてさ,自分の研究の話してもだれも分かってくれないんだもの。」

私 「そういうことって確かにある。」

I藤くん 「そうでしょ。一言じゃ説明できないよね。」

――これは日常よく経験することで,専門的な分野であればあるほど説明するのが難しいのです。専門用語を並べてみてもまるでチンプンカンプン。――

私 「ユミだったらね,無理に研究の話しないようにしているよ。というよりも,同じゼミ内でも似たような現象が起きているわ。私の相方なんて私が今何をやっているか,何を目指しているか全然把握できていないもの。」

専門分野の話し相手がいない云々というのは,ぼくにとっても切実な悩みです。I藤くんはデータをスプラインで補完するプログラムの書き方に困っていました。ぼくは統一モデリング言語に興味があるのですが,学内で話し相手になる人がいなくて困っています。

(もっとも,話し相手になる人がそのへんに大勢いても怖いんですけど。)