1999-09-26  “超漢字”の衝撃

TRONWARE vol.59」はなかなか興味深いです。この号では,BTRON3*1仕様OSの(事実上の)最新バージョンである「超漢字」(B-right/V R2)が紹介されています。「超漢字」の特長は約15万*2の文字を扱うことができるということ。このバージョンで,いわゆるTRON文字セットのほとんどがサポートされるようです。従来の「B-right/V R1」では,フォントの問題を含めた実装が追い付いていなくて,TRON文字セットのほんの一部にしか対応できていなかったのです。

さらに見逃せないはBTRONアプリケーションの開発キット(無料)の登場です。今のところBTRONアプリケーションはUNIX系OSでクロス開発する(シリアルポートを使ってプログラムの転送やデバッグをする)しかない*3のだが,「TRONWARE vol.59」には開発キットの導入方法が簡単に説明されています。これから挑戦したい人は必見です。ほかにも“座談会「ITRONをめぐる思い ―急成長を遂げるアプリックスに聞く―」” という記事も興味深いです。システム系の仕事に従事している人や学生さんは,立ち読みだけでも構わないからぜったい読んだ方がいいです。

*1 BTRONとは,コンピュータの仕様に対する名称であり,特定の製品を指すものではありません。

*2 本当は13万字のようです。「TRONWARE vol.59」の記事中では,約15万字という文句が頻繁に出てくるんだけど,いつのまにか2万字減らされてしまったようです。きっと仕様変更されたのね。よくありがちです。

*3 奇妙なことですが,BTRONではBTRONアプリケーション(実行形式ファイル)を作ることができません。開発環境がないというのは,BTRONがそういう仕様だからなのではなくて,アプリケーションの整備が進んでいないからです。今後,開発環境ができる可能性は高いです。もっともできたとしても,マイクロソフト系の開発環境並に洗練されるまでには,今の調子のままだと四半世紀掛かるんじゃないかって気がします。それじゃ,BTRONではまるでバッチ処理ができないのかというと,もちろんそんなことはありません。BTRONには「マイクロスクリプト」という,プロシージャー型言語(インタプリタ)の処理系が標準で備わっています。マインスイーパー程度のプログラムなら,BTRONだけでも作ることができます。(「マイクロスクリプト」のコーディング流儀はかなり古いもので,N88-BASICのそれに似ています。悪い言い方をすれば,とっくに時代遅れだということです。