2005-11-20  Excel VBAの本の感想をまとめて

「サラサーティ1」の開発に際して,Microsoft Excelについてさまざまな調査をしました。今回の取り組みではExcel VBA(Visual Basic for Applications)を初めて使ったので,Visual Basicの文法からExcelのオブジェクトモデル,既知の問題まで幅広く情報収集しなければなりませんでした。

情報収集の際に何度も本屋さんに足を運びました。今日は市販されているExcelとVBAの書籍の感想をお話します。

EXCEL VBA コーディング・テクニック

(間 顕次著,毎日コミュニケーションズ,2002.8,ISBN 4-8399-0739-0)

初めて買った本です。最初はどんな本を選べば良いのかさっぱり分からなかったので,適当に買ってしまいました。

この本は買うだけ無駄のようです。例題はかなり実践的なのですが,「フォームにコントロール(GUI部品)をべたべた貼ってみました」という世界からの展開がありません。小物以上のマクロを作りたい人にとっては物足りないのです。

ここが知りたかった! Excel VBA 500の技

(Windowsプログラミング愛好会 著,技術評論社,2005.6,ISBN 4-7741-2414-1)

網羅性は高いのだが,極端に底が浅いです。分からないことを解決する糸口を見つけるのには役に立ちますが,決して糸は解けません。

Excel VBAの機能はものすごく多いので,どんな機能があるのか大雑把に知りたい人にとっては便利だと思います。

それから初版だからかもしれませんが,誤字・脱字がとても目立ちました。

Excel Hacks プロが教える究極のテクニック100選

(David Hawley,Raina Hawley著,羽山 博 監訳,2004.10,オライリー・ジャパン,ISBN 4-87311-205-2)

お勧めの一冊です。VBAとExcel数式を使った恐ろしい技がつぎつぎ出てきます。何気なく通りすぎて読み返してみると「おおっ」と来ます。

ただ完全性がないというか,柔軟性にやや欠ける気がしました。

例えば「勝手に広がる名前付き範囲」では,あらかじめ大雑把な行数をハードコード(直書き)しなければなりません。何ひとつ矛盾がなく,美しく整理された世界に焦れている人にとって数値が固定されているなんて,とても許されることではありません。

でも実際のExcelの利用現場を見ると,「阿漕」だとか「邪道」なんて言っている場合ではありません。「最終的にA4用紙からはみ出ないで印刷できればいい」というときには,数値が固定だろうが可変だろうが,セルの参照が絶対だろうが相対だろうが,そんなことはどうでいいのです。

経済・金融分析のためのVBAプログラミング

(原田 康平 著,牧野書店,2000.10,ISBN 4-7952-0136-6)

お勧めの一冊です。章立てがしっかりしており,学校で使う教科書みたいな書き方をしています。学術書に慣れている人にとってはかなり読みやすいと思います。

コンピュータ業界の人にとっては常識みたいな事柄も丁寧に書かれています。プログラミングの経験がまったくない人でも,自力で読み進めることができるでしょう。

ただこの本はお金の計算を目的としており,用途がかなり限定されます。また対象としているExcelのバージョンは「2000」ですので,やや古い感じがします。

Excelデータ分析[増補版]

(I/O編集部 著,工学社,2005.1,ISBN 4-7775-1096-4)

この本はVBAの本ではありません。Excelの統計関数を説明した本です。かなり平坦な言葉で書かれているので,統計の知識がなくても読むことができます。

数学の本って表記が難解というか「数式に使われている記号の意味すら分からない」なんて困ったことになりがちです。この本は,高校数学の知識があれば読めるように工夫されているらしく,極端な拒絶反応は起こりにくいようです。