2012-11-01 小坂明子“あなた”
1974年のヒット曲です。最初に,YouTubeに寄せられているコメントを引用しておきます。
sanimaru2000
当時、16歳の女子高生だった小坂さんが授業中に書き下ろしたこの詩。
彼女の乙女心がストレートに伝わってきました。
jMerleauPonty
自分がおかしいという自意識の作用がない場に生まれるのが「妄想」のようです。
<略>
この歌のよさは「私の愛しい人はどこに」つまり失恋というつらい現実を自覚した上で叶えられない幻想を語る少女のけなげさにあります。そしてその少女はどうしようもない喪失感を歌うことでなんとか折り合いをつけようとしているように思われます。
――とってもいい曲だと思うのですが,「16歳少女の妄想」という指摘を目にしてから,私は,この曲を素直に聴けなくなくってしまいました。
病的な危うさが見え隠れするんですよね。
そもそも,恋愛すら,実体験があったものなのか疑わしい。
「ありもしない恋愛」「ありもしない恋愛の上に成立する,ありもしない失恋」「ありもしない結婚生活」「ありもしないマイホーム」「どこにもいない坊や」「どこにもいない,あなた」,それらすべてが16歳少女の妄想だったのだとしたら,これは完全に神のなせる業です。(ゆえに,ヒット曲になったのでしょう。)
しかも,とっても情熱的に歌い上げているのですよね。妄想が爆発するかのように。
どうして気味が悪いのかというと,空想と現実の境目が分からないからだと思います。男性が作詞したのなら,すべてが作り物だとはっきり分かりますので,怖くないのですが,女性が作詞したとなると,どこかに実話が混ざっていてもおかしくないのです。
自縛霊の叫びみたいな,妙な生々しさがあるのね。ゆえに,ヒット曲になったのでしょう(←2回目)。