2016-04-10  映画「十階のモスキート」を観ました

先週,「十階のモスキート」のDVDを買いました。以前から,きちんと観てみたいと思っていた映画でございまして,TSUTAYAやネット配信で探してみたのですが,どうもレンタルでは調達できない作品らしく,正攻法でDVDを買うことになりました。

細やかな感想

昔から男性の生き様は,「飲む,打つ,買う」だと言われています。「飲む」とは,お酒を飲むという意味です。「打つ」とは,博打をするという意味です。「買う」とは,性交渉をするという意味です。男性にとっての人生の勝ち負けは,これら三つの行いの出来不出来に依ると考えられているようです。(本当にそうなのかは知りません。)

さて,この映画の主人公は,これら三つの行いすべてに敗北しています。

  • 酒に溺れて人生に失敗
  • 博打に負けて人生に失敗
  • 良い女に恵まれなくて(いわゆる「さげまん」を掴んで)人生に失敗

最後に,郵便局で強盗事件を起こして物語は終わります。

この映画は,会社をサボって,映画館で時間を潰す会社員向けの作品だったのかもしれません。最初から最後まで直球勝負で,まったく捻りがありません。無意味に突然,濡れ場が始まるあたり,ピンク映画と構成がかなり似ています。

パソコンの扱い

私が,いまさら「十階のモスキート」をきちんと観てみたいと思った理由は,NEC PC-8001が出てくるからなのです。

作中でパソコンがどういう位置づけなのかなと思っていたのですが,残念ながら,主人公が日ごろの暇つぶしに買った玩具のひとつというだけでした。結構な頻度で出てくるのですが,話の内容に直接,関係があるわけではありません。

主人公にとっての玩具は,パソコンとKEIKO(中村れい子,行きつけの飲み屋の従業員)でした。

飲み屋のママ(宮下順子)に,「いつか玩具に遊び返される」と忠告された後,KEIKOに裏切られ,KEIKOは自分の玩具ではなくなってしまいます。(ほかの人の玩具になった。)

残ったパソコンは,主人公が十階から投げ捨てて破壊したわけで, KEIKOの代わりにパソコンを始末したということなのかもしれません。単純に,高所から落っことして物が壊れる場面を撮りたかっただけなのかもしれませんが。落下地点と,飛び散った破片の軌跡を合わせた構図が異様に美しかったので。

ちなみに,投げ捨てたのは,正確にはCRTディスプレイのみであり,パソコン本体が壊される場面はありません。ディスプレイだけまた買ってくれば復活したのかもしれませんが,そこまで深読みしても意味がないでしょう(ふめい)。

「モスキート」とは何のことだったのか

「モスキート」というのは「蚊」という意味です。

私は,パソコンのデータレコーダ(市販のカセットテープを利用した外部ストレージ装置)の音が蚊の鳴き声に似ているから,このような呼称をつけたのだと思っていました。ところが,作中にデータレコーダとカセットテープが映る場面は存在するものの,稼働音にはまったく触れられておらず,映画館の観客がそのことに気づく術はありません。

まさか,ビープ音のことをモスキートと言っているわけではないでしょうし。

十階に住んでいる虫けら男の哀れな人生,くらいの意味だったのかもしれません。