2021-12-05  マリオさんのナルシズム撮影会

マリオさんとは

マリオさんは某ジムの常連です。いつも真っ黒に機械日焼けしている中年男性です。

なぜマリオなのかというと,この人が任天堂のビデオゲームに登場するキャラクターのマリオに似ていると思うから。イラストの(曲線で描かれた)マリオよりも,ドット絵のマリオに似ていると思うんですよね。顔の雰囲気がとくに。

マリオさんのファッションは独特です。どこで売っているのか分からないような服をお召しになっています。マリオさんは,独自の世界観で生きている感じのお方なのです。

マリオさんは謎だらけの人物です。背中のいたる箇所に注射痕らしきものが存在した時期もあり。筋肉増強剤の注射痕だったのか,針治療の痕だったのか未だに不明。これから先も,あれが何であったのか判明することはないでしょう。

ナルシズム撮影会

マリオさんは,トレーニングが終わるとロッカー室の化粧台の鏡で自身の肉体を眺めるのが日課です。

ある日,私が化粧台の椅子に座って髪を乾かしていたときの出来事。

どこからともなくマリオさんが現れ,いつもの体の観察が始まったかと思ったら,唐突にスマートフォンで撮影を始めました。

私は顔に化粧水をつけたり,体にクリームを塗ったりする作業が残っていたので(きちんと肌の手入れをしておかないと赤くなったり痒みが出たりするでしょう),その場から離れることができませんでした。

有無を言わさず,私はマリオさんのナルシズム撮影会に巻き込まれてしまったのです。

私はマリオさんの写真に一緒に写っていたのかもしれませんが,至って冷静でした。呆れただけ

マリオさんは,なぜか連射モードで撮影していました。シャッター音がそんな感じでした。

「連射モードって,被写体が動き回っているときに使うんですよ。あなた,いま立ち止まっているでしょう。連射モードで撮影する必要ないでしょう」って教えてあげようかと思いました。しなかったけどね。

もしかしたら,シャッターボタンを短く押すという操作ができなくて,つい長押ししてしまうものだから意図せず連射になっていたのかもしれません。それはそれで不器用なところが可愛いのかも。

やっていることは,非常識極まりないのですが,この程度の軽薄な行動にいちいち苛立っていたのでは世の中,生きづらいのです。

むしろ面白い生き物に遭遇した気分で対処するのが,賢明と言えるでしょう。