2024-01-14  市内某ビデオボックス―終わりゆく世界と共に―

先週,市内某インターネットカフェを調査してきたというお話をしました。そのとき私は,ビデオボックス(個室ビデオ店)のことを思い出していました。インターネットカフェでは,ビデオ・オン・デマンド方式で成人向け動画が見放題でした。提供されているサービスが,既存のビデオボックスと完全に競合しているのです。

インターネットカフェは,店の運営が極限まで自動化されていましたが,ビデオボックスは昔と変わらないはず。ビデオボックスの現状を調査してみることにしました。

私はいまから15年くらい前,市内に点在するビデオボックスに足繁く通っていた時期がありました。ビデオボックスは年々,減少を続けており現在は片手で数えるほどしか残っていません。

某一級河川沿いのお店

時刻は21時すぎ。

その日は,某一級河川沿いのお店に行ってみることにしました。20年前から存在は知っていましたが,入店するのは今回が初めて。

店は2階建て。1階に貸し出し用のDVDの棚と受付があり,2階には試写のための個室が並んでいました。

店の利用方法は,ほかのお店と同様で単純明快。観たいDVDを選んで,お金を払って個室に移動するだけ。会員登録のようなものは存在しません。

個室にはDVDの再生装置とテレビ,そして椅子が置かれていました。ドアの上下には空間があるため防音ではありません。知っている人であれば,極めて標準的な構成です。

私は一旦,個室から出て小便をするために便所へ行くことにしました。

隣の様子がおかしい

便所から個室に戻ってみると,隣の個室のドアにおかしな変化が起きていることに気付きました。

ドアの下にサンダルが片方だけ置いてあったのです。ついさっきまではサンダルなんか置かれていませんでした。これは何かの合図でしょうか。(白々しい)

サンダルは店の備品です。室内で寛ぐために,自分の靴を脱いで履き替えるためのものです。写真では分からないかもしれませんが,ドアは半分だけ閉まった状態でした。外からドアのノブを引けば開けられる。

私は素人ではないので,いきなり他所様のドアを勝手に開けて潜入するようなことはしません。それに何かの罠という可能性もあるのです。

私は隣を無視して自分の個室に戻りました。

隣の人は声出しするわけでもなく,中で動き回っている気配も感じられませんでした。過去に利用していた時期も思っていたことだけれど,ビデオボックスのお客さんって地味な人が多いんですよね。

終わりゆく世界と共に

私は90分コースを選んだのですが,入店から1時間で退店することにしました。あくまで調査のために入店しましたが,何が起きるか分からないので時間に余裕を持たせていたのです。

数年ぶりに利用してみたら,意外とお客さんの出入りが激しい印象でした。「今時わざわざ試写室を利用する奇特な人いるのか」と思っていましたが,どうして根強い需要があるのですね。

1階に降りてみると,従業員とお客さんが談笑していました。お客さんの年齢は70歳くらい。従業員は60歳くらいでした。そこには終わりゆく者同士の終わりゆく世界が繰り広げられていたのです。

私は,「この人たちが死んだら,この店も一緒に消滅するのね」なんてビデオボックス業界の未来を悲観しながら帰宅しました。そんなことを言いながらも後日もう一度,調査してきたんだけどね。しかも昼から。(なぞ)

その話はまた日を改めて。オラオラ。