*シラネーヨの生声を求めて

音声収録ネタばらし

シラネーヨ絵本5話―シラネーヨの気持ち―」は,ヒッキーさん(宇田多ヒカルではない)がシラネーヨの本心を語るというお話です。私はこれまで実験的にですが,2ちゃんねるキャラクターに声をあててきました。この頃ようやくそのノウハウが確立しつつあるので,実際の工程を順序だててお話します。

1. キャラクターの性格を想像する

はじめにキャラクターの性格を想像します。印象が曖昧なままでは仕上がりに影響するからです。ヒッキーさんは名前のとおり引きこもり少年です。お世辞にも明るい性格ではないはずですが,今回,私はあえて彼にやや明るい性格付けをしました。陰気な印象にもできますが,感情移入すると私の気分までジメジメ,真っ黒になってしまいます。

2. 読み上げ原稿を作成する

原文に読み上げる際の指示記号を入れます。鼻濁音の表記方法は「標準アナウンス発音辞典(日本放送協会編)」を参考にします。具体的には「が」,「ぎ」,「ぐ」,「げ」,「ご」に各々,「か゜」,「き゜」,「く゜」,「け゜」,「こ゜」と読み仮名を振ります。例えば「午後」の読み方は「ごご」ではなくて「ごこ゜」です。

今回はこんな感じになりました。

ぼくにはシラネーヨの気持ち よく分かるよ

知ってることを「知ってる」って 自慢されたら

ちょっとィヤな気分になるよ

「ウザい奴だ」って いじめられるかもしれないよね

それなら「シラネー」って言った方が<か゜> 無難だよ

ぼくは知ってるよ ↑<語尾を上げる>

シラネーヨが<か゜>本当は何でも知ってること

でもひみつなんだ ←<軽快に>→ だれにも言ったことないよ

ぼくもィヤだからさ なんでも「知ってる」って自慢するのは

3. 発声練習

いよいよ録音ですがその前に,真似ごと程度に発声練習をします。「あ,え,い,う,え,お,あ,お」っていうアレです。私は職業柄,普段あまり喋りません(げ)。発声練習しておかないとつっかえちゃって全然だめなのです。

4. 録音

コンピュータに音声を取り込みます。私は「RolandのUA-100」というUSB接続のPCM音源を使っています。UA-100の音声変換機能で音声を加工しながら録音します。声のピッチはいろいろ変えられるのですが,今回は,変声期を迎えるか迎えないかくらいの少年風にしてみました。しかし,男声のような女声のような,子どものような大人のような,そんな声に加工するのは難しかったです。あれでもなるべく近づけたつもりなのだが,自然に仕上げられませんでした。どうも澄んだ質感が出せないんだよね。今後の研究課題です。

Roland UA-100

☆画像の説明:録音に使っている機材です。録音中はヘッドフォンを掛けて,音声を確かめながら喋ります。ダイナミック・マイクロフォンは廉価品を使っています。音声収録の知識がまだないので,どういう機材を揃えればよいのかよく分からないのです。

マイクアンプが必要なのかもしれません

【追記 19 OCT 2003】 私には悩みがありました。どうも収録した音声の音量が小さすぎるです。「きっとマイクが悪いに違いない」と思い込んで,あれこれマイクの調査を続けていたのですが,どうも悪いのはマイクではなく,使い方が間違っていることに気づきました。私はUA-100で朗読の音声を収録しようとしていました。考えてみるとUA-100の本来の使い方は,ボーカルの声を収録することなのです。UA-100のマイク端子の利得は,「叫び声」を入力するためのものであって,「呟き」を入力するものではなかったのです。これでは音量が小さくなるのは当たり前です。というわけでUA-100で朗読を収録するときは,備え付けのマイク端子を使うのではなくマイクアンプにマイクを接続して,マイクアンプのライン出力をUA-100のライン入力に接続すると良さそうです。でもいかんせんまだ調査不足なもので,本当にこの機器構成でよいのかまだ自信が持てません。

シラネーヨの生声を求めて

それにしても,どうすれば「シラネーヨ」やら「ヒッキー(宇田多ヒカルのことではない)」たちの自然な生声を創り上げることができるのでしょうか。今日はそのヒントを探るべく市内,旭屋書店へ行ってきました。収音の技法をまとめた文献を探すためです。私はあれこれ試すよりも,まず物事の要点を知りたいのです。お若い方は試行錯誤で解決の糸口を見つけようとするんでしょうけど,私はあまり経験則に頼ろうとは思いません。経験則で得られる成果の限界を知っているからです。

というわけで,探してみたらありました。「若林駿介 著,『新版 レコーディング技法入門』,オーム社,1993」という本にとっても詳しく書いてありました。早速,次回の収録に役立てましょう。

「新版 レコーディング技法入門」の表紙

☆画像の説明:「新版 レコーディング技法入門」の表紙です。FM-77AV40で作ったようなコンピュータ・グラフィックスですね(ふめい)。

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