2004-12-11  ホムペを求めて三千里―SNSの正体―

インターネット上での新たなサービスとして「ソーシャル・ネットワーキング・サイト(Social Networking Site)」が注目されています。私も実際に使ってみたので,ホムペとの比較を交えて感想をお話します。

真新しさを感じなかった

私がはじめてSNSを体験して感じたのは「15年前のパソコン通信やいまの『ホムペ』と大して変わらないな」ということでした。

最初はどういうサービスなのか興味があったのですが,ふたを開けてみると,昔の草の根ネットや第1世代ホムペとまったく同じだったのです。その日あった出来事を投稿して感想をもらったり,同じ趣味の人同士が意見交換したりしていたのです。手段が変わっただけで,目的はなんら変わっていなかったのです。

隔離と監視を望んだ人々

SNSの本質は「隔離」であり,アーキテクト(ここではインターネット業界を仕切る人)たちのではないでしょうか。SNSは知り合い同士が情報交換するためのサービスです。これは単純に,閲覧者の特定とアクセス制限のできるホムペだといえます。対してホムペでは,アクセス制限なんてありませんし(アクセス制限したWWWはホムペではありません),だれが見たのかといった閲覧者の情報を正確に知ることもできません。

さて,見方を変えると,SNSは隔離と監視ができるシステムだと言えます(逆にホムペでは隔離と監視ができません)。SNSはつまらない日記と掲示板のカキコ,有害セルフヌードから健常者を守るために,諸々の奇妙な人たちを隔離し,どれだけ奇行に走っているか監視しているとも解釈できるのです(毒)。

およそ10年前,アーキテクトたちは民間人に「ホムペ」という火を与えました。ところが彼らは満足に火を使いこなせないばかりか,罪を犯す者さえ現れました。いままさにアーキテクトたちは,SNSによってこの火を取り上げようとしているのです。SNSは,第1世代ホムペで汚染されたWWWの浄化を促しているのです。

ホムペが蝕まれていく

SNSが普及して痛手を被るのは,ホムペです。私が愛玩している小熊たちのホムペでも,「SNSはじめました」というカキコをしばしば目にするようになりました。そしてまもなくして,そのホムペたちは更新されなくなりました。

ホムペからSNSに移行してしまった人は,ホムペに見当違いな期待をしていたのではないでしょうか。「ホムペでアイドルになれると思ったのにどうも違う。掲示板には妖怪しかカキコしてくれない。理想と現実は違うらしい」ということに気づいて,活動の場をほかに移そうとしているのではないでしょうか。SNSでならそんな願望が叶うと思っているのではないでしょうか。

場所を変えたところで,結果は同じですよ。だって,同じ人が同じことをしていたのでは,行き着く先は同じなのです。ホムペで起こりえることは,SNSでも起こりえます。「どうでもいい人が日記にコメントをつける。見てほしくない人が毎日のように足跡をつける。見て欲しい人が見てくれない」なんて火を見るより明らかです。満たされない人は,どこで何をしようとも満たされないのです。(SNSは手段であり,目的ではないということを思い出してください。)

さて,SNSの普及でホムペは衰退してしまうのでしょうか。ホムペは誕生から10年も経たずに消え去ってしまうのでしょうか。それとも,まだしぶとく生き残るのでしょうか。SNSはホムペにとって脅威ですが,SNS自体いつまで続くサービスなのか分かりません。あっけなく廃れてしまう可能性すらあります。これからも,注意深くホムペたちとホムペする人たちを観察する必要がありそうです。