2007-01-16  アルゴリズム株取引の準備―その3―

上田センセイ考案手法の実装物の効果を検証しました。今回は長文な上に内容がやや難解です。読もうとする人はほとんどいないでしょうが,そんなの知ったことではありません(なぞ)。がんがん行きますよ。

あらまし

1月上旬,私は上田センセイが考案した相関係数0.98法により,儲かりそうな株を自動抽出するシステムを完成させました。自動的に最新の株価データを分析し,推奨する銘柄と買値,売値を教えてくれるようになりました。

ところで,本当にコンピュータの指示を信じてよいのでしょうか。確かに提示される銘柄はそれっぽい気がします。でも細かな挙動やシステムの癖は何も分かっていません。どうして数字の裏づけの取れてないシステムを信用できるというのでしょうか。世の中に欠点のないものなど存在しないはずなのです。

そこで性能を測ってみることにしました。私は以下のことが知りたいと思いました。

  • 勝率はどれくらいなのか
  • 相関係数0.98未満の銘柄は絶対に買ってはいけないのか
  • 利率は何パーセントなら良いのか。5%は欲張りすぎ?
  • 買った株がいつまで経っても値上がりしないとき,損をしてでも手放すとしたら,その判断の目安はなにか

これらの疑問を解決すべく分析を進めることにしました。

分析の概要

  • 対象期間:2006年4月1日から2007年1月12日
  • 分析の単位:1日

さて,全銘柄を分析しようとすると計算量が膨大になってしまいます。そこで以下の方法により試行回数を減らしました。

  • 2006年4月からひと月単位で相関係数が0.9以上になる銘柄を抽出 ... 操作(1)
  • 操作(1)にて抽出した銘柄に対して1日単位で相関係数を計算 ... 操作(2)

分析には限界があります。操作(2)の結果は局所解です。操作(1)で抽出が漏れた銘柄は,操作(2)の対象外となります。この場合,分析の精度が低下します。

それから,重要なことなのですが,今回の分析では標本数が足りていません。相関係数が0.98以上の結果は精度が低い可能性があり,あまり信用できません。ただし,まったく信用できない,というわけでもありません。

結果(1) ―取引可能件数―

相関係数ごとの取引件数

<説明>2006年4月1日から2007年1月12日の期間で,何件の銘柄が買い条件を満たしたかを調べました。本方式では「買い条件は相関係数が0.98以上の銘柄」としていますが,0.98未満の銘柄も調査対象にしました。相関係数が0.98を超えた件数はわずか10件でした。相関係数0.98以上の銘柄は稀にしか現れないのです。このままでは取引がほとんどできません。買い条件を緩和することは可能でしょうか。

結果(2) ―勝率―

相関係数ごとの勝率

<説明>勝率とは,買ってから予想価格まで上昇し,売ることに成功する確率です。成功の反対,すなわち「失敗」は,買ったけれど予想価格まで上昇することがなく,売ることができなかった場合を指します。

相関係数と勝率との関係。相関係数0.98未満でも勝率は極端に下がらないことが分かりました。相関係数0.97以上を買い条件としても良さそうです。

利率と勝率との関係。利率とは,買値と売値を比較し,結果として何割儲かったかという数値です。利率を5%とした場合,利率3%よりも売却に失敗する確率が高くなりました。利率を欲張るほど損をしやすくなることが分かりました。

結果(3) ―売却率と保有期間―

売却率の推移

<説明>株を買ってから予想価格まで上昇し,売却できるまでに要した期間を調べました。

利率3%の場合。10日間で50%の取引が完了しました。32日間で75%の取引が完了しました。95%の取引を完了するには137日間掛かりました。

利率5%の場合。20日間で50%の取引が完了しました。55日間で75%の取引が完了しました。95%の取引を完了するには180日間掛かりました。

方針の決定

分析の結果,この子の正体がだいたい分かりました(なぞ)。以下,使い方の心構えです。

  • 買い条件は相関係数0.97以上とする
  • 利率は3%とする
  • ひと月経っても上がるのか下がるのか分からない銘柄はさっさと手放す

この方針は,あくまで今回の分析結果から導き出したものです。この先,ころころ変わる可能性があります。